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ゆまにて・イメ


セーチさんが出した条件、それは「僕も助手として悪夢退治に同行する」こと。
勿論僕はその条件を引き受けた。
憧れの黒崎先生を助けるために憧れのセーチさんの助手を務めるだなんて願ってもない話だ。
よおし、ここは小学生らしく頑張るぞ。おー。



「じゃあ先生、夢の中で会いましょう」
「ああ、夢の中でな。」


「それでは、また。」

「ああ、またな」





ゆまにて・イメ







ふと瞼を開くとそこは僕の夢空間。小指の赤い糸がキチンと結ばれ、もう一本の糸もしっかり握られている。
ポケットを漁ってマッチ発見!火を点けた。
一分もしない内に セーチさんはやって来た。
「やあ。アキラ君。準備はちゃんとしてくれたかい?」
火をランプに灯しながら、セーチさんは言った。
僕はコクリと頷いて、小指の糸ともう一本の糸をセーチさんに見せた。
「よし、これですぐに先生の夢の中へ行ける。」
そう言い自分の左手薬指に赤い糸を捲きつけると、もう片方の手を僕に差し出した。
「さあ、行こうか」
「はい!」
僕は少し頬を赤らめながら 差し出された手をギュッと握った。




「あの、セーチさん。訊きたいことがあるのですが。」
「ん?なんだい?」
「糸を捲きつけることになんの意味があるのですか?」
「こうやって糸を辿っていけばすぐに先生のところへ行けるからだよ」
「なるほど。では何故左手薬指と小指なのですか?」
「元来左手薬指は心臓の血管が通っていて、『心に通じる指』とされている。結婚指輪は薬指に付けるだろ?
 それには『束縛』と『契約』の意味も含まれているんだ。先生は君を通じて僕と『契約』したからね。小指の糸は親
 密を表している。どちらにせよ何かと意味があるのだよ。」
「そうなんですか。わかったようなわからないような…。では何故わざわざ『赤い糸』なのですか?」
「それは勿論」
急にセーチさんは立ち止まり、ニッコリと微笑んだ。
「その方が、色々と面白いだろう?」

「ぇ」


「特に、第三者から見れば。」
「・・・・・・」
「さあ着いた。これが先生の夢空間だ。」
そう言い立ち止まった先には黄色い靄が立ち込めた平野があった。赤い糸の先はその中に入り込んで見えない。
「なんですか?この霧は。」
「さあ…これが悪夢の正体…かな。でも、どうやら夢魔じゃなさそうだ…。とにかく入ろう。」
セーチさんの言葉に、僕たちは霧の中へ足を踏み入れた。






他人の夢の中へ入るという経験を僕は初めてしたが、なかなかおもしろいものだと思った。
それは一瞬の出来事。まるでゼリーの海に放り投げられたかのようだった。
そしてその先は、夜の平野。空にはいくつかの星が光り、生暖かい風に草が揺れる。
へぇ。これが先生の夢なんだ。
どこかで虫の音が聞こえる夏の夜。その真ん中に、先生はいた。
「先生!」
僕は先生に駆け寄った。だが、先生の意識は無い。
「まだ夢の中に来ていないようだね。大丈夫、もうしばらくしたら来るさ。」
風が、段々強くなる。
「もっとも、その前に来るだろうけどね。悪夢の正体が。」
虫の音が消えた。靄が濃くなり、霧となる。



「                 」

何か、霧の先から聞こえたような気がした。
「セーチさん。今、何か聞こえませんでしたか?」
「ああ、聞こえた。段々とこちらに近付いてくる。」
それは徐々に大きく、僕たちの耳に入り込んできた。
それが「歌声」だとわかるのに、時間はかからなかった。



♪恋する心はドッキドキ 瞳に移すはあなたのメガネ
 夢見るはいつもあなたの笑顔 私は思うの その白衣
 叶わぬ恋でも構いはしない 心の翼 その無精ひげ
 命短し恋せよ乙女 最期に思うは貴方の面影
 その身儚し燃え尽きよ乙女 燃え?萌え?どちらもオッケー☆
 ラビュー せめて気付いて 私のこの想い♪






……うわぁ。すごい歌。でも、その歌詞。
メガネに白衣、無精ひげって…
もしかして…



♪夕暮れの光 染まる教室
 いつも持ち歩いてた 科学の教科書
 ラビュー だから私 まっすぐ前向い、て…て…








て?!









歌が途切れた。と思ったら、霧の向こうから凄まじい音を立てて何かが突進してきた。
その速さはまさに俊足。っていうか速過ぎだよ!

ほんの瞬きの間に現れたのは じょ、 女子高生?!
セーラー服に身を包み、髪を二つに結んだキレイな女の人。
だけど凄まじい形相で僕達を睨みつけている、女子高生のお姉さん。が、絶叫。


「ちょっと誰よアンタ達ー!わ た し の 先生と赤い糸結んじゃって―!!!」


「どうも初めまして、国光暁良です。」
「初めまして、僕はセーチ」
「いやいやこちらこそ、私は木下まひる…って、

ちっがーう!!



どうやらさっきの歌い手の招待は、このまひるさんのようだ。きっと、この霧を出しているのも。
でも、この人…。

「ねぇ、セーチさん」
僕はそっとセーチさんに耳打ちした(軽く背伸びして)。
「あの人が悪夢の正体ですか?夢魔には見えないんですけど」
「ああ、僕もそう思う。どう見てもあの子は人間だ。けれど…」
「ちょっとなにこそこそ話してるのよ!」
まひるさんが苛立ちげに叫び、僕らの方へ近付いてくる。
「大体なんなの?!そこのランプ持ったおにーさんは

左手薬指

、そこの男の子は

小指

をご丁寧に赤い糸で先生と結ばれちゃって!!

何これ?!急にライバル出現?!三角通り越して四角関係?!ドロ沼恋愛?!挙句の果てにボーイズ・ラブ??!


いやあぁー!!私の先生を汚さないでー!!!



凄まじい誤解を伴った凄まじい絶叫に 先生が目を覚ました(夢の中で目を覚ます、という言い方もおかしいと思うけど)。」
寝ぼけ眼(これもおかしな表現だけど)自分の赤い糸が巻かれた両手、僕、セーチさんと目線を移し、最後にまひるさんを見て

硬直。



「先生!遂に目覚めた!私を見てくれた!!会いたかったーvv」
「き、木下?お前、木下なのか?!!」
勢いよく抱きついてきたまひるさんに体勢を崩しながら、先生はただただ驚き呆然とするばかり。
…呆然としたいのは、僕たちの方なんですけど…。
「二人とも、お知り合いですか?」
「あ!、そういう貴方は…」
やっと先生はセーチさんに気付いたという様子。
「ご紹介が遅れました。僕はセーチ、国光君に頼まれて貴方の悪夢の根源を退治しに来た者です。どうやら貴方が今まで悪夢だと思っていたのはその少女なのですが、彼女は一体…」
「えー!先生、今まで私のこと悪夢だと思ってたの?!ひっどーい!!」
「ちょっとお前は黙ってろ。
 えっと…俺は黒崎信哉。ご丁寧にどうも、こいつは、俺が前いた学校の生徒だ。」
そういえば先生、前は女子高で化学教えてたんだっけ。
なんか、訳あって辞めたらしいけど。

「それより木下、お前どうしてここにいるんだ!?」
「もちろん先生に会いに来たきからに決まってるじゃないですか☆」
「そうじゃなくて!お前は二年前からずっと…」
「ずっと、夢を見続けていたのです。ずっと、ずーっと。」
変わらぬ明るい口調でまひるさんは言った。
「…話が、読めないのですが。」
セーチさんの言葉に、二人は簡単な説明をした。
まひるさんはとにかく明るく。先生は、深刻そうに。
二人の話をまとめると、こうだった。


二年前。
木下まひるはとにかくおかしな生徒だった。
授業ではいつも必ず手を上げ、真面目な質問から私的なこと、果ては即興詩を読み上げてクラスを沸かせてしばし俺の授業の邪魔をした。
まぁ、進み具合に支障はなかったから良いのだが。
実験は一人必ず失敗。いつも放課後補習を受け、その度におもしろい話やらクサイ台詞やらいっては俺を困らせた。
木下まひるはとにかくおかしな生徒だった。だが、不思議と一緒にいて、居心地の良い生徒だった。
そんな彼女が事故に遭ったのは 夏休みも間近な日のことだった。

あの日。私は先生とのあまーいv補修の後、家に帰る途中。
本当に突然のことだったの。交差点でぶつかり合う車。ブレーキとクラッシュ音、通行人の叫びが耳に響いた。
弾き飛ばされた車が、私の方に突進してきて…。
気がつくと、私の意識は身体の外から抜け出ていた。
これっていわゆる幽体離脱?わー、初めての体験v
弾き飛ばされた車に弾き飛ばされた私は頭を強く打ち重症。
幸い、一命は取り留めたけど、意識は戻らずそのまま眠ったまま。
今も病院の一室で私は眠ってるわ。私のからだは。
心だけ現実の中を彷徨っててもつまらないじゃない?だって、誰も私の存在に気付いてくれないのだもの。
そんな時に見つけたの。「夢の世界の入り口」を。
見つけたついでにおもしろいものを手に入れたわ。これ。
ペーパーナイフ。
これを持っていると誰の夢の中も簡単に入れた。夢魔も、これで退治できた。
いろんな人の夢を覗いたの。友達の夢、家族の夢。私を轢いた人の夢…。
そして見つけたの。先生の夢を。





「君が拾ったのは夢渡りに必要な道具だね。これは…大分古い代物だな。きっと昔の遺物だろう。もうすぐ、これは消滅して使えなくなるよ。」
「ええ、わかってます。でも、いいんです。私が人の夢の中に入るのは今夜で最後だから」
「どういうことだ?」
先生の問いかけに まひるさんは明るく答えた。

「だって私 もうすぐ死ぬから。」




…ちょ、ちょっとまって。凄く良い話なんだけど、すっごくいい話なんだけど!!

主人公の僕を置いて、話をどんどん進めないでよ!!


っていうか、話が急にダークな方向に進んでるよ?!ドラマ仕立てだよ?!作者もビックリだよ!!
っていうか!!霧が先生とまひるさんの周りをご丁寧に囲んじゃって!!すっかり二人だけの世界だよ!!
僕たち、一体何しに来たの…?完全に部外者じゃん!!





「夢の中と現実の世界を行き来して、色々なことを知りました。」
淡々と、だけど変わらぬ明るい口調と笑顔でまひるさんは語る。語る。語る。
「もうすぐ、私は脳死と判定されます。そうすると私の体の機関は困っている人達に移植されます。心臓も、血液も、角膜も。」
「そうなると私という存在はもう、現実世界にいなくなる。夢の世界にもいられないから、しかるべき場所に行くんでしょうね。天国か、はたまた地獄か。」
「身体に戻ろうとも思ったんです。でも、戻れなかった。たくさんの、苦しんでいる人達の夢を見たのです。腎臓の病気で透析を受け続けている女の子。ドナーが現れずに死んだ恋人を抱きしめることしか出来なかったと悔やみ続ける青年。子どもの目の病気を治すために働き続ける盲目の踊り子。私の身体で、その人達が助かるのなら、それもいいかなと思って。」
「でも、その前に私、先生との約束を果たしたかった。先生、覚えています?最後に先生に会ったときのあの言葉。」
一呼吸おいて、黒崎先生、口を開く。
「ああ、覚えている。俺に見せたいものがあるって。ずっと、心残りだった。」
「ずっと準備していたんです。先生に見せるために、ずっと…。」

まひるさん、ペーパーナイフを振り下ろす。その動きと同時に霧が地面に落ち、その形を変えていく。
黄色い霧は花弁となり、高々と天を目指す向日葵となった。
一面の向日葵畑で見詰め合う二人。いつの間にか空の色も明るくなり、遠くからは風鈴の音も聞こえてくる。

「私…先生にずっと、この光景を見せたかったんです。綺麗でしょ?先生。」
「ああ…すごくきれいだ」
「私、ずっと決めてたんです。先生と一緒にこの光景を見ようって。ずっと、先生の夢の中に忍び込んで、向日葵を育ててたんです。先生には嫌な思いさせちゃったみたいですけど…」
「お前そんな事のために!その力をどうして目覚める努力に使わなかったんだ!!」
「だって!私にとって、先生との約束の方が大切だったから…。先生、私…」
その時、ペーパーナイフが砕け散った。パラパラと落ちる残骸を眺め、まひるさんは微笑んだ。
「先生、もう、時間みたいです…。最期に会えてよかった…。先生、ずっと、好きでした。」
「行くな!そんな、折角会えたのに・・・。」
「大丈夫です。私、ずっと先生のこと見つめていますから…。先生…」
「行くな!!」
先生、まひるさんをぎゅっと抱きしめる。驚きに目を見開くまひるさん。
「先生?!」
「確かに、お前が死んです救われる人間がいるのかもしれない…。だが、俺にはお前がいないと救われないんだ。俺にはお前が必要なんだ!」
「先生…」
「戻れないことなんてあるものか。俺がお前を現実へ引き戻す。俺と一緒に、今を生きよう。」
「先生…。」
「木下…。」


向日葵に囲まれて抱き合う二人。バックサウンドに、確か前に見た、ラブストーリーのテーマソングが流れ出す。
でも、これって…これって、さぁ・・・・・・・・。
「先生…」
「木下…」
「私、嬉しい!先生が、そんな

クサいプロポーズしてくれるだなんて!


「ぇ」
「ええ、クサイですね。」
「クサイし、それ以上に あっまーいですね。先生、激しく偽ですよ。」
「そりゃそうだろうね。だって先生あの霧全身に浴びてたからね。あの霧、精神高揚作用があるよ。それも黒崎先生限定の。」
「え!そうなんですか!!」
「ちょっと!それ言ったらオシマイぢゃない!!部外者は黙って見てなさいよ!私と先生の愛の物語を!」
「ええ、見てます。クサすぎる青春の物語を。」
「しっかりと目に焼き付けて、クラス中に話すとします。」

「お・・・おまえ等ー!!!」












「お待たせー☆あ、みんなもう揃っているのね。私黒崎先生のとーなりvv」
「なっ!お前そんなにくっつくなよ。」
「見せ付けないで下さい二人とも。折角の紅茶が甘くなる。」
「ハハハ。いつ見ても飽きないね、この光景は。」

あの夢の夜からもう二ヶ月が過ぎた。
あの後、先生は訳のわからぬ叫びを上げ続け、まひるさんは僕たちから赤い糸をしっかり強奪した。
「ところでセーチさん。貴方に頼みがあるんですけど」
まひるさんはセーチさんに耳打ちし、なにか話してる(さっきはコソコソ話はダメだって言ったのに)。
セーチさんはまひるさんの話に目を見開きまじまじとまひるさんを見つめた。
「君、そんなことまで考えていたのかい?」
「ええ。そんなことまで考えていました。それがなにか?(ニッコリ)」
「そいつは…随分と策略家なお嬢さんだ…」
本当に、まいったな。
困ったような笑いを浮かべたセーチさんにまひるさんはまたニッコリと笑いかけた。
そして邪魔者の僕たちは先生の夢を後にした。背後から先生の喚きと、まひるさんのクサイ言葉が聞こえたが、それはまぁ、耳に流しておいた。



「先生最近現実の世界で会いに来てくれないじゃないですか。寂しいですよ。」
「最近学校が忙しいんだよ。運動会やら修学旅行やら…。来週土産持って会いに行くから我慢しろ」
「キャー☆やったぁvv」


あの夢の日の朝、先生は病院に電話をした後、すぐ病院に出かけていった。
まひるさんは夢の後すぐに目を覚まし、二人は二年ぶりに感動の再会をはたした。
「ぼさぼさな頭で先生が駆けつけてくれた時は本当に嬉しかったーv『木下ー!』って叫んで、看護婦さんに病院内では静かにって怒られちゃって。本当に可愛かったーv」
その日のことをまひるさんはそう語っている。



「そういえば、この間のレポートマルもらいました。これもセーチさんのおかげですvセーチさんたら、博識なんですもの☆」
目覚めたものの、二年間も眠り続けていたまひるさんの体力はすっかり衰えていた。最近やっと歩けるようになったらしい。
そんな状態ではとても学校に通えないのでまひるさんは今までの高校を辞め、今は単位制の高校に入り直した。
それなら学校にほとんど通う必要がないので、そこで勉強をしつつ、これからもリハビリを続けるらしい。
そして卒業した暁には、「黒崎夫人の座をvv」らしい。
先生はそれを、ゲッソリした顔で聞いていたけど。




「で、今日はセーチさんへのお礼が三つあるのv」
遅刻しておきながら一番元気に、そして話の軸をしっかり廻しつつ、まひるさんが明るく言った。
「一体なんですか?セーチさん、何かまひるさんにしたのですか?」
僕の問いにセーチさんは苦笑いを浮かべるばかり。
「まず一つ目はさっき言った、レポートの件でしょ。そしてもう一つは・・・」
フフフフ、と笑みを浮かべながらジャジャーーン!!と自分で効果音を付けながらまひるさんは言った。
「私を轢いた人がね、宝くじで一等を当てたのvvその意味、わかる?アキラ君?」
ええ?!急に僕に話をふらないでよ!!
えーと、きっとまひるさんを轢いた人は今頃借金塗れなんだろうな。
何故って、例え事故とはいえ轢いその子はずっと病院で寝たきりなんだもの。きっとずっとICU入りだったろうし。
当然責任取らされるわけで、でも普通そんな大金持っている人なんていなくて
だから・・・
「まひるさんの元に、慰謝料が大量に入りますよね。それでも轢いたその人には充分お釣りが残る。」
「そうなのよーvやっぱいい学校通っているだけあって短時間で色々考えるわねぇこの子v
 夢の中で私を轢いた人の夢に入ったんだけどね、本当に可哀想だったの。朝から晩まで働いて、事故の罪悪感
 で潰されちゃいそうで。だから、ちょっと、ね。」
そう言って、まひるさんは上目遣いにセーチさんを見た。
「夢、作ったのよね。『宝くじが当たる』夢。勿論正夢になるサービス付。それを夢玉にして、あとは本人の夢空間
 に入れるだけだったんだけど、私はもう夢渡れなくなっちゃったし。
 だから、セーチさんに頼めないかなーと思ってv」

ナルホド。帰る前に耳打ちしてたのはこのことだったのか。
「一応、人助けになるからね。もう今回だけだという約束で。」
本当に、まいったよ。
そう言ってセーチさんは苦笑した。
「それで、三つ目ってのはなんなんだよ。一体。」
今まで話に入ってこなかった黒崎先生が急に話に入ってきた、と、思ったら。
まひるさんはくるーりと後ろを振り返り、黒笑。
「よくぞ訊いてくださいましたv」
うわ!まひるさん、せっかくキレイな顔してるのに、それじゃこわいよ!!恐すぎだよ!!
「ジャっジャジャーン!!ビデオテープー」
某朝日テレビで大人気、青い身体に四次元ポケットが大の魅力vなキャラの声音を真似て、真昼さんは一本のビデオテープを取り出した。
一方、セーチさんはテレビとビデオデッキをテーブルに設置している。
「どうしたのですか?それ」
「ちょっとね。まひるさんに頼まれて。」
ナルホド。これがまひるさんの言う「第三のお礼」なのか。
テープをデッキに入れ、さいせーいv
画面に映るは先生のアップ


『確かに、お前が死んです救われる人間がいるのかもしれない…。だが、俺にはお前がいないと救われないんだ。俺にはお前が必要なんだ!』




画面から流れる大絶叫に満面の笑みを浮かべる者一名。硬直する者二名。

飲んでいた紅茶を豪快に吹き出すもの一名。


うわっ。汚いよ先生!!

「なっなっなっ…なんだそれはー!」


画面から流れる映像は多少細工がなされているらしい。余計な部分(僕やセーチさんが映っている場面は完全カット。二人が見詰め合っているシーンには花びらが舞ったりしている。
「これ作るのすっごく苦労したんですよーvすごいでしょー秀作でしょーvv」
「本当に、良く出来ているね、これ。甘々しくて砂吐きそうだよ」
「全くで。クサすぎて今度のHRにみんなで観賞したい位ですね。」
「先生と私の披露宴に記念として流そうかなーと思って。こっそり隠しカメラ仕込んで撮りましたーv」
「すごいなぁ。夢に隠しカメラ仕込むだなんて、夢渡りの僕ですら考えなかったよ。」
「結婚式には是非呼んで下さいね。僕、ベール持ちしますから。」

「…お前ら。いいかげんにしろ――――――!!!!!」











これは、平々凡々で健全な小学生の ちょっと不思議な物語。
素敵な夢渡りさんと
ちょっぴり策略家(恋する女は皆策略家なのよvByまひる)な高校生と
最後まで報われない先生との
ちょっぴり不思議な 物語。
ちょっと説明不足かな?でもいいや。
小学生の僕が皆さんに伝えられるのはこれで精一杯。
え?その後は一体、どうなるかって?

・・・・・・・・・・・・・。

答は、皆さんの心の中。

あ、チャイムが聞こえる。次は音楽だった。急がないと。
それでは皆さんさようなら。
また、どこかでお会いできるといいね。






おしまい。



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